転作田で多彩な野菜づくりに励む ~雪上散布すると消雪が早くなり窒素成分も逃げない~
山形県川西町 斎藤さん
■8人グループで仲良く切磋琢磨
雪国、米沢に生まれた私は、風のように移りかわる四季の流れのなかで、土とともに生きる百姓の子として、心身ともに逞しく育ちました。望んで農家に嫁ぎ、もう34年目の春を可愛い孫たちと迎えようとしています。
わが家の中心作物は水稲(4.2ha)で、そのうち減反の分の水田転作を私が責任を持つことになりました。数々の野菜を熱心につくり始め、近所の主婦たちと勉強を重ねるうちに、気の合った8人のグループ(堀金野菜の会)で市場出荷の話がまとまりました。それぞれ自慢の野菜を、毎日当番を決めて朝市場に届けます。8年前に初めて代金を手にした喜びを忘れず、今も仲良く切磋琢磨しています。
私の市場向野菜は、早春の「クキタチ菜」、夏から秋にかけての「丸ナス」と「食用ギク」、冬は雪のなかから浅みどりの「アサツキ」という体系です。
もともと、水田の硬い土はなかなか野菜と相性が悪く、特に肥料選びには困難を極めました。そんなとき、ふと娘時代に使っていた石灰窒素を思い出したのです。ゴボウ、ニンジン、キャベツなどの1級品を、畑作専門だった実家の父母が立派につくり出していました。その姿を脳裏に、私は一生懸命、試行錯誤を繰り返し、その結果、どんどん石灰窒素の魅力にとりつかれていきました。
■早く消雪して土を温めるのが大切
一面の雪原にようやく陽の光が温かさを増し始める2月下旬、「かた雪」といって晴天の朝、雪が凍り、どこを歩いても平気な日があります。毎年、そのときをねらって子ども用のソリに石灰窒素を積んで、クキタチ菜畑とナス畑に向かいます。クキタチ菜は、1日でも早く消雪することが増産につながり、ナス畑も早く消雪して土を温めるのが最も大事な仕事なのです。
純白の雪の上にツンと鼻をつく石灰窒素は「今年も頑張るぞ!!」と私に気合いを入れてくれます。こうして施した場所は消雪が早く30〜40㎝の段差があり、日数にして20日ぐらい早く土が顔を出します。窒素成分がじわりじわり堅土に深くしみ込んでゆくので、肥効に持続性があり、クキタチ菜は花が咲いて摘めなくなるまで追肥は必要ありません。ほかの肥料を施したこともありましたが、3回以上追肥しなければ肥切れになりました。
■作物に応じて上手に使い分ける
石灰窒素の抜群の経済性はやはり魅力です。散布量は3a当たり20㎏が一番よいこともわかりました。雪上では窒素成分が逃げてしまうのではという人がいて、直接施したこともありましたが、大事な新芽が傷ついてしまい失敗しました。いろいろな経験からみて、窒素成分は不思議なことに雪の上では逃げていかないと思います。
ナスを植える6aの場所にも石灰窒素を40㎏散布します。露地栽培で5ヵ月余りと収穫期間が長いので、肥料のベースとして畝上げ前の耕うんのときもう一度40㎏を施します。紫の美味しいナスは、石灰窒素の化身のように思います。
私の転作田は40aです。いろいろな作物をあふれるほどつくり、石灰窒素を作物に合わせて施します。キャベツ、ニンジン、食用ギク、アサツキなどはなるべく多く、ジャガイモ、ダイコン、ササギ類は少なめにし、カボチャや豆類はほんの少々にして上手に使い分けていきながら、石灰窒素とともに増収に迫っていきたいと思います。
石灰窒素は農業一筋に生きる私たちに、なくてはならない肥料です。将来に向かって長い歴史を歩まれることを望みます。
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